情報処理技術者試験は年に2回開催されていますが、今回は試験の一つであるITサービスマネージャに実際合格した時のサンプルを公開します。
目次
1. 試験概要
ITサービスマネージャに求められるものは、「顧客ニーズを踏まえ、日々の継続的改善を通じて安全性と信頼性の高いITサービスを提供し、IT投資効果を最大化できる」です。
言葉にすると難しいのですが、超簡単に要約すると「安く効率よく止まらないITサービスを管理する人」です。
そして、ITサービスマネージャの試験は以下の内容で実施されます。
午前Ⅰ | 午前Ⅱ | 午後Ⅰ | 午後Ⅱ | |
---|---|---|---|---|
試験時間 | 9:30~10:20 (50分) |
10:50~11:30 (40分) |
12:30~14:00 (90分) |
14:30~16:30 (120分) |
出題形式 | 選択式 | 選択式 | 記述式(短文) | 論文 |
出題数 解答数 |
出題数:30問 解答数:30問 |
出題数:25問 解答数:25問 |
出題数:3問 解答数:2問 |
出題数:2問 解答数:1問 |
午前Ⅰ・Ⅱ・午後Ⅰは、高度試験ではおなじみの試験内容となっているので本件では割愛します。
(過去問題やっておけば合格レベルに達します)
やはり最大の難問は午後Ⅱの論文といえるでしょう。
2. 論文の例
では早速、私が合格した時の論文例を掲載します。
(すべてを覚えていないので、完全一致ではないです)
1.システム障害の長時間化の防止策
1-1私が携わったITサービスの概要
T社はアンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサービス、WEBメールシステムを提供するASP事業者である。静岡を中心に15の営業所と2つのデータセンターを保有している。
私はT社のITサービスマネージャであり、おもにWEBメールシステムの保守、運用、管理を担当している。主な業務の流れは、顧客からの問い合わせ対応はサービスデスク課が受け付けて回答を実施する。システムに関する要望などについては、システム運用課へエスカレーションを実施する。システム運用課ではサービスの保守、変更作業を実施する。また、インシデント発生時には、各課の上長を含めサービスデスク課、システム運用課が連携をとって対応を行う。
1-2長時間化したシステム障害の内容
長時間化したシステム障害として、メールの送信が5時間にわたって遅延する現象が発生した。WEBメールシステムではメール遅延チェックスクリプトが組み込まれており、メール送信に時間がかかった場合、警告メールがシステム運用課メーリングリストに送信される。この警告メールにより本現象が起こっていることに気付いた。
具体的な現象内容については、メールの送信自体はすぐに実施可能であるが、メールが到着するまでに約30分程度時間がかかっていた。影響範囲は全WEBメールシステムで発生。そのため、全顧客にメール送信が遅延する影響がでていた。現象発生後より顧客からの問い合わせが数多く発生し、対応に追われる状況となった。メールシステムはある程度のリアルタイム性が求められる為、本事象にてお客様からの信頼を落としてしまう結果となってしまった。また本件を理由に2社のお客様が解約となってしまった。
2.障害が長時間化した原因の究明
2-1障害が長時間化した原因の究明
障害が長時間化した原因の究明について以下視点から原因究明を実施した。
①情報が適切に収集できており、かつ適切に解析が実施できていたか。
メールサーバ、ネットワーク機器のログ収集は手順書が備わっていた為適切に収集することができていた。ただし、収集したログ解析についての手順に盛り込まれていなかった為、解析に時間がかかるという状況であった。また、対応に当たった人員の経験が少ないことも原因の一つとなっていた。
②各機器を調査するに当たり属人化していないか。
メールサーバやアンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサーバといった各機器の管理が属人化していないかを調査した。調査した結果、アンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサーバについて調整、調査を実施している人員は2名に限られている状況であることが判明した。障害発生当日、担当者が1名休暇中であった為、サーバのログ解析を1名で実施していた為に時間がかかっていた。また、ログ収集や解析の手順書が存在しておらず、担当者任せとなっていた。
2-2障害が長時間化した原因
障害が長時間化した原因は以下の通り。
①アンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサーバの処理に問題があった。
アンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサーバの上段にある負荷分散装置のログと下段にあるWEBメールサーバのログを確認したところ、アンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサーバを通過するのに時間がかかっていることが確認された。アンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサーバのログを解析したところ、ウイルス定義体を更新したタイミングでメール送信に時間がかかっていることが判明した。ウイルス定義体をひとつ前に戻すことで現象が解消されたことを確認した。
2-3実施した防止策について
実施した防止策については以下の通り
①WEBメールサーバ、ネットワーク機器、アンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサーバのログ解析勉強会の月に1度の開催
ログ解析について、経験者を増やすことで今後の対応が迅速に行えるようにする。また、勉強会開催については全員が必ず受講するよう工夫をした。具体的に月毎の参加者リストを予め作成しておき、業務調整を行ったうえで受講する流れとした。これにより最低でも3ヶ月の間に必ず全員が受講できるようにした。
②アンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサーバのログ確認手順作成、担当者の属人化を避ける運用
アンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサーバについてはログ取得から解析の手順が整っていないことからこれらを全て作成し、誰でも対応が可能となるようにする。作成に当たっては担当していた2名を中心とした。工夫した点として、作成後のレビュー実施はシステム運用課、サービスデスク課から数名ずつ参加し、疑問点や理解の難しい記述などがなくなるまで見直しを実施した。また、属人化した状況を改善するために開発機を利用した操作勉強会を月に1度設けた。特に工夫した点は、勉強会実施時に単純な操作を実演するのではなく、実際に障害を想定したログ確認やステータス確認方法の操作とした。また操作時の確認者として、担当していた2名のうち、必ず1名が立会い確認するようにした。
3.評価と今後の課題
3-1防止策を実施した内容の評価
私が実施した防止策はうまく機能しており、課員の障害対応時のログ解析スピードアップも図ることができた。また、アンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサーバについてもログを解析する者とステータスを管理する者といったようにパラレルに作業が実施できるようになり、効率が大幅にアップした。
3-2.今後の課題
各サーバのログ解析について、未知のログであった場合に対応が遅れてしまうので、今後ログ出力結果による事例集の作成が必要である。また、勉強会の内容についても解析にとどまらず実際の障害対応を疑似体験させる内容も盛り込むようにする。
アンチスパム、アンチウイルスゲートウェイサーバの手順書について、専門用語が多く使われており、理解をするのに少し時間がかかる。手順書の内容を確認し、図解や分かりやすい表現をとりいれて、新規に増員した課員でもすぐに理解できるよう改善していく必要がある。
今後も今の形だけに留まらず、改善を繰り返しよりよい体制にて取り組めるよう努力したい。
以上
内容を読むと「日々の業務そのままじゃん」と感じる方が多いのではないでしょうか。その通りで、日々の業務の流れをいかにも「私中心にやってますよ」的に書けば合格は難しくありません。
実は一番の敵は「時間」です。これだけの内容を2時間以内に書き切らなければいけないので、とにかく急ぐ必要があります。(手が痛くなります)
3. まとめ
いいかがだったでしょうか。ITサービスマネージャの論文レベルを実感できてもらえていれば幸いです。
ちなみに私の周りでも同じ試験を受ける方がおりますが、大半午前Ⅰで落ちるようです。なのでベテランの方であれば「午前Ⅰ対策」をメインに自身の知識確認をしておくことをお勧めします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。